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どうなる? 令和6(2024)年度 介護保険法改正[介護報酬改定]

介護のあれこれ ワンポイント解説

介護保険法は、介護保険に関する規定を決めた法律で、給付の負担額や施設の運営基準などが定められているため、サービスを提供する施設やそこで働く人に関わりの大きなものとなっています。介護保険法は、社会状況の変化に適切に対応していくために、1997年の成立以来、おおむね3年に一度の改正が行われてきました。2024年は、その改正の年。また、2024年は医療保険や障害者総合支援法といった介護保険法と関連する法制度の改正時期でもあります。
それでは、今までと何が変わるのか、介護業界で働く方の視点でその内容を見てみましょう。

そもそも「介護報酬」ってなに?

厚生労働省によると「介護報酬」とは、「事業者が利用者(要介護者又は要支援者)に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に支払われるサービス費用」を指します。「各サービスごとに設定されており、各サービスの基本的なサービス提供に係る費用に加えて、各事業所のサービス提供体制や利用者の状況に応じて加算・減算される仕組み」です。「介護報酬」はその時々の人口構造や社会・経済の変化を踏まえ原則的に3年ごとに改定されます。
介護報酬の基準額は「介護保険法上、厚生労働大臣が審議会(介護給付費分科会)の意見を聴いて定めること」となっています。

2024年の介護報酬改定のポイントは?

今回の改定は、次の大きな4つのポイントに沿って実施されます。

  • 1.域包括ケアシステムの深化・推進
  • 2.自立支援・重度化防止に向けた対応
  • 3.良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
  • 4.制度の安定性・持続可能性の確保に関する改定

働く人にとっての直接の影響は?

上記の項目の中でも、介護業界で働く人にとって最も気になるのは上記3番の「働きやすい職場づくり」ではないでしょうか。
この内容を細かく見ると、次の3点が挙げられます。

  • 1.介護職員の処遇改善
  • 2.生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり
  • 3.効率的なサービス提供の推進

これは簡単に言ってしまうと、「将来的に不足が見込まれる介護人材を確保し、離職を回避し定着してもらうため、待遇や職場環境の改善を図ろう」ということ。「やりがい・定着・キャリアアップにもつながる職場環境の改善に向けた、先進的な取組を推進するための改定」が行われます。

まずは「介護職員の処遇改善」のための措置をできるだけ多くの事業所に活用してもらえるよう、従来の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「会議職員等ベースアップ等支援加算」を4段階の「介護職員等処遇改善加算」に1本化。
賃上げに関しては、「令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう、配分方法の工夫を行う」としています。
次に「働きやすい職場環境づくり」として、7つの項目が挙げられているので、ちょっと読みにくいかもしれませんが骨子を挙げておきます。

  • 柔軟な働き方の1つとして、テレワークに関しては「人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種」に対して、個人情報を適切に管理していること、利用者の処遇に支障が生じないこと等を前提として取扱いを明確化。職種や業務ごとに具体的な考え方を示す。
  • 介護現場における生産性の向上への取組の促進を図るため、事業所の状況に応じて「利用者の安全・介護サービスの質の確保・職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会」の設置を義務付ける。
  • 介護ロボットやICT等の導入後の継続的なテクノロジー活用を支援するため、見守り機器等を導入し生産性向上ガイドラインに基づいた業務改善を継続的に行うとともに、効果に関するデータ提出を行うことを評価する新たな加算を設ける。
  • 見守り機器等のテクノロジーの複数活用や職員間の適切な役割分担の取組等により、生産性向上に先進的に取り組む特定施設について、介護サービスの質の確保・職員の負担軽減が行われていることを確認した上で、人員配置基準の特例的な柔軟化を行う。
  • 介護老人保健施設等において見守り機器等を100%以上導入する等、複数の要件を満たした場合に、夜間における人員配置基準を緩和する。
  • 認知症対応型共同生活介護において見守り機器等を10%以上導入する等、複数の要件を満たした場合に、夜間支援体制加算の要件を緩和する。
  • EPA介護福祉士候補者及び技能実習の外国人について、一定の要件の下、就労開始から6月未満であっても人員配置基準に算入してもよいこととする。

このほかにも、「効率的なサービスの推進」として、3項目が挙げられています。

項目だけ読んでもわかりにくいかもしれませんが、大きな狙いは簡単に言えば「介護現場で働く人の負担を減らしつつ、介護サービスの質を上げ、継続させる」ということです。ただし、どこまで対応できるかは、各施設の置かれている状況によっても異なってくると思われます。
※上記項目は事業所のサービス形態によって適用の有無が異なります。

いつから施行される?

施行は同時ではなく、ズレがあるので注意が必要です。

・6月施行とするサービス:居宅療養管理指導、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション
・4月施行とするサービス:上記以外のサービス

項目によっては1〜3年ほどの経過措置期間が設けられていますので、施行されてすぐは状況が変わらない場合もあります。

令和6(2024)年度 診療報酬改定4つのポイントの概要

参考までに、以下に今回の改定の4つのポイントの狙いと主な項目をあげておきます。最新の情報やさらに詳しい内容を知りたい方は、厚生労働省のHP等でご確認ください。

  • 「地域包括ケアシステムの深化・推進」

    認知症の方や単身高齢者、医療ニーズが高い中重度の高齢者を含め、それぞれの住み慣れた地域において利用者の尊厳を保持しつつ、質の高い公正中立なケアマネジメントや必要なサービスが切れ目なく提供されるよう地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取組を推進。
    (1)質の高い公正中立なケアマネジメント、(2)地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取組、(3)医療と介護の連携の推進、(4)看取りへの対応強化、(5)感染症や災害への対応力向上、(6)高齢者虐待防止の推進、(7)認知症の対応力向上、(8)福祉用具貸与・特定福祉用具販売の見直し

  • 「自立支援・重度化防止に向けた対応」

    高齢者の自立支援・重度化防止といった介護保険制度の趣旨に沿い、多職種による連携を通じた取組の推進や、アウトカム指標を踏まえた評価の推進に向けたデータの活用等を推進。
    (1)リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等、(2)自立支援・重度化防止に係る取組の推進、(3)LIFEを活用した質の高い介護

  • 「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」

    介護を担う人材の不足や将来の担い手減少の中で、更なる介護サービスの質の向上を図るため、賃上げ等を通じた介護人材の確保・生産性の向上に対応していく。
    (1)介護職員の処遇改善、(2)生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり、(3)効率的なサービス提供の推進

  • 「制度の安定性・持続可能性の確保に関する改定」

    保険料・公費・利用者負担で支えられている介護保険制度の安定性・持続可能性を高めていくことで、若年層から高齢者まで全ての世代にとって安心できる制度としていくことが求められる。
    (1)評価の適正化・重点化、(2)報酬の整理・簡素化

  • その他

    (1)「書面掲示」規制の見直し、(2)基準費用額(居住費)の見直し、(3)地域区分、(4)通所系サービスにおける送迎に係る取扱いの明確化

出典:「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」厚生労働省