ONE POINT ADVICE介護のあれこれ ワンポイント解説
2024年4月、「認知症介護基礎研修」が完全義務化!
介護のあれこれ ワンポイント解説介護職の方はすでにご存知かもしれませんが、2024年4月から介護職員の「認知症介護基礎研修」の受講が完全義務化されました。
2021年度 介護報酬改定において、「認知症についての理解の下、本人主体の介護を行い、認知症の人の尊厳の保障を実現していく観点から、介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格を有さない者に対し認知症介護基礎研修を受講させるための措置を講じること」が義務化。2024年3月31日までは経過措置期間として努力義務となっていましたが、現在は介護職員の「認知症介護基礎研修」の受講は必須になったのです。介護職で未受講の方は年内に受講しなければなりません。
これによって、今後は医療または介護職員初任者研修などの福祉関係の資格がなく、認知症介護基礎研修を受講していない人は、介護サービスを提供する事業所で介護職として働くことができなくなります。また、全ての介護サービス事業者は、新たに職員を採用した際には採用後1年間に研修を受講させる義務を負い、怠った場合は行政処分を受ける可能性もあります。
目次
「認知症介護基礎研修」の目的は?
目的は大きく2つあり、1つは認知症の高齢者とその家族の視点を重視し、利用者本人を主体とする介護を行う上で必要な基礎的な知識・技術・考え方を身につけること。
もう1つは、他職種・他の介護職とともにチームアプローチに参画する一員として、基礎的なサービスを提供できるようにすることです。
「認知症介護基礎研修」を受講しなければいけない人は?
介護に直接携わる職員で、医療・福祉関係の資格を保有していない人は皆、受講しなければなりません。なお、「資格」とは認知症サポーター等養成講座などの民間資格は含みません。
「認知症介護基礎研修」が免除される人は?
以下の資格を持っている人は、受講する必要はありません。
- 介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、生活援助従事者研修、介護職員基礎研修過程、訪問介護員養成講座研修一級課程・二級課程修了者、認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者研修などの修了者
- 医師、看護師、准看護師、歯科医師、薬剤師
- 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
- 精神保健福祉士
- 管理栄養士、栄養士
- あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師
- 福祉系高等学校、養成施設等で認知症に関する科目を履修 など
「認知症介護基礎研修」はどこでどう受講する?
詳細は自治体によって異なりますが、原則としてeラーニングで受講することができます。
例)東京都の場合
- 受講要件: 東京都内の介護保険施設・事業所等において、介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格を有さない方等
- 受講料: 3,000円
- 受講方法: 指定事業者(認知症介護研究・研修仙台センター)に直接申し込み、eラーニングで受講
なお、令和5年10月の報告※では、研修修了者の受講した時間帯については「すべて業務時間内に受講」が46.1%、「すべて業務時間外に受講」が39.0%、「業務時間内外の受講」が14.4%。受講場所については「職場のみ」が55.5%、「自宅のみ」が33.0%でした。
施設や事業者が受講の支援を行なっている場合もあり、特に「介護老人福祉施設」では他の事業種別より力を入れているようです。施設や事業者の支援内容は、
「業務時間内に研修を受講できるようにしている」
「受講しやすいよう、シフトに配慮している」
「時研修費用を全額補助している」
「オンラインでの受講ができるようパソコンやインターネット環境を整備している」
などでした。
資格がなく講習未受講で、これから勤務先を探す方は、どのような支援があるかも確認すると良いでしょう。
「認知症介護基礎研修」の内容は?
実施主体によって異なりますが、概ねeラーニング形式による講義動画視聴を中心に、以下のような内容を学びます。
- ・認知症ケアの基礎(理念、考え方など)
- ・認知症についての基礎知識
- ・認知症の人の症状、心理、行動
- ・認知症ケアの基礎技術
確認テストを行い、知識に定着を確認しながらカリキュラムを進めることが多いようです。
「認知症介護基礎研修」を受講して何が変わった?
修了者に対するアンケートでは※、「認知症の方へのケア方法に変化があったか」という問いに対して、
「本人の話をよく聴くようになった」
「適切な表情や態度を意識しながら行うようになった」
「一人ひとりの様子を見て、その行動の要因を探るようになった」
「利用者への言葉づかいを変えるようになった」
「個別のケア計画や記録、他のスタッフのケアをよく見て、ケアが同じになるようにした」
という回答が多くありました。
また、「まだ受講していない職員に勧めたいと思うか」という問いに対しては、そう思う・ややそう思うと答えた人は91.3%にのぼります。
この結果からは、すでに介護職として働いている人にとっても、学ぶところが多かったことが伺えます。
「認知症介護基礎研修」は高齢化が進む今の時代、介護の現場で必須の知識が身につく研修であることは間違いありません。また、ご自身が自信を持って仕事をするためにも役立つでしょう。eラーニングならば自分の都合に合わせて学ぶことができますので、「これから介護の世界で働いてみたい」と思う方は、ぜひ「認知症介護基礎研修」について知っておいていただきたいと思います。
なお、「どうせなら、最初から介護職員初任者研修を目指したい」という方は、以下をご参照ください。
介護業界キャリアアップの道 キャムトラの資格取得支援キャンペーン
※「認知症介護基礎研修受講義務付けの効果に関する調査研究事業」厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会(令和5年10月11日)